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「電蝕」って電気を蝕むの!?電気化学的腐蝕について

2024.06.09

まず、電蝕と聞いてすぐにイメージできますか?

少なくとも、電気にまつわる仕事をしてない人はあまり聞き馴染みのない言葉かと思います。

そんな電蝕ですが正式名称は「電気化学的腐蝕」と言い、たまに「電食」と書く人もいます。

むしろ、電気化学的腐食と書いて「電食」と略す場合もありますので、実際は同じ意味と捉えても問題ないと言えるでしょう。

今回は電気化学的腐蝕について書いていきましょう。

電気化学的腐蝕とは?

電蝕(電気化学的腐蝕)というのは、異なる金属が電解質溶液中で接触している際に発生する腐食のことを指します。

これは一種のガルバニック腐食というもので、電位差によって金属の一方が犠牲になり、腐食する現象です。

簡単に説明すると、異なる金属同士が接触して錆びてしまう現象です。

言葉にすると難しく聞こえるかもしれませんが、文章だとイメージが出来やすいと言えます。

電蝕はどのように進行するのか?

電蝕はすぐに発生するものではありません。
普通の錆びと同じように進行していきますので、ここではどのように進行するのか書いていきましょう。

まず、異なる金属が接触し、電解質溶液中に存在すると、電位差が生じ、アノード(金属が溶解する側)とカソード(金属が保護される側)が形成されます。

そのアノードから電子が放出され、カソードに移動し、電解質溶液が電子の移動を助けルコとによって電蝕が進行するという流れになります。

電蝕が発生する原因

電蝕が発生してしまう主な原因はなんなのでしょうか?

異なる金属が直接接触することによって、電位差が生じます。
たとえば、鋼とアルミニウム、銅と鉄などが典型的で、これを「異種金属の接触」といいます。
また、電解質溶液(水分や塩分など)が存在することで、金属間の電流の流れが促進されます。

その他にカソード側で酸素が消費されるため、酸素が供給される環境では電食が進行しやすくなり、高温多湿の環境では電解質がより活発に働くことによって、電食のリスクが発生しやすくなります。

電蝕の影響で何が起きるの?

電蝕は金属製品や構造物に様々な影響を及ぼします。

どんな影響があるかというと、金属の損傷が起きます。
金属が腐食することで、強度が低下して構造物が損傷するということです。

金属の損傷によって、橋梁や建築物の耐久性に重大な影響を与えます。

また金属部品が腐食すると、その機能が低下し、機械や電気機器の故障の原因となります。

故障が原因というわけではありませんが、腐食による破損は安全性の観点から重大な問題を引き起こす可能性があります。
例えば、ガスパイプラインの腐食はガス漏れを引き起こして爆発のリスクを高めます。

電蝕の防止策

電蝕の影響で様々な影響が起きることは上記で説明しました。

それでは電蝕を防ぐためには、どのような対策があるのでしょうか?

まず第一に大事なことは絶縁処理をすることです。
異種金属が直接接触しないように、絶縁材料で隔てることが大事。
絶縁テープやガスケットの使用が一般的です。

また、同じ種類の金属を使用することによって電位差をなくし、電食のリスクを減らします。

他にも防食コーティングなどで金属表面に防食コーティングを施すことで、電解質との接触を防ぎます。
主に塗装や亜鉛メッキなどが効果的です。

上記の電蝕対策を施したあとで1番大事なのが、定期的な点検とメンテナンス。

金属部品や構造物を定期的に点検し、腐食が見られた場合は早期に対策を講じます。
腐食部分の清掃や再塗装も重要です。

電蝕に関する教育とトレーニング

電食防止のためには、関係者全員がその重要性を理解し、適切な知識と技術を習得することが不可欠。

そのトレーニングとは一体どんな内容なのでしょうか?

研修プログラム

電蝕の基礎知識や防止策についての研修プログラムを実施して、技術者や管理者に対して定期的に教育を行います。

認証制度

防食技術者の資格認証制度を導入し、専門的な知識と技能を持った技術者を育成します。

ワークショップとセミナー

最新の防食技術や事例研究を紹介するワークショップやセミナーを開催し、業界全体で知識を共有します。

このように、色々なトレーニングを行い電蝕に対する理解力を上げて行きます。

電蝕の事例

電蝕の具体的な事例をいくつか紹介していきましょう。

これらの事例から、電食の理解と防止策の重要性が見えてきます。

そもそも、多くの橋梁は鉄鋼で構成されているため、電蝕の影響を受けやすいです。
そのため、アメリカのシルバー橋という大きな橋が電蝕の影響で1967年に崩落し、多くの人命が失われるという悲惨な事故が起きました。

原因は、長年の電蝕による構造的な劣化です。
この事例から、定期的な点検と防食対策の重要性が義務付けされました。

特に地下に埋設されているパイプラインは、土壌中の水分や塩分によって電食が進行しやすくなり、パイプラインの破損やガス漏れが発生、重大な環境汚染や爆発事故を引き起こす可能性があります。

まとめ

今回のブログでは電蝕(電気化学的腐蝕)について書かせていただきました。
皆さんもあまり聞き馴染みのない単語ですし、ピンと来ない方も少なくないと思います。

しかし、電蝕は決して他人事ではありません。

適切な防止策を講じることで、電食の影響を最小限に抑え、金属製品の長寿命化と安全性の確保が可能です。

今後も電蝕防止対策も進化し続けますし、環境に優しい防食材料やスマート防食システムの普及が期待できるので、皆さんも他人事とは思わず頭の片隅にでも入れておいていただけたら幸いです。