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電力解析攻撃!電気の力で悪用される!?

2024.05.26

「いけえ!電力解析攻撃だああああ!」

と声を思わずあげてしまいそうな言葉ですが、電力解析攻撃というのは実際に存在します。
決して造語ではなく、れっきとしたコンピューターで使用される言葉で、物理的な攻撃というよりもネットワークに関係しています。

今回は電力解析攻撃について書いていきましょう。

電力解析攻撃とは何か

電力解析攻撃(Power Analysis Attack)は、暗号化デバイスが消費する電力の変動を観察することにより、デバイス内部の機密情報を推測する攻撃手法です。

これはサイドチャネル攻撃(Side-Channel Attack)の一種であり、物理的な特性を利用して情報を盗むという点で、伝統的な暗号解読方法とは異なります。

電力解析攻撃は、特にスマートカードやモバイルデバイスなどの小型デバイスに対して効果的であり、セキュリティ対策が不十分な場合、大きな脅威となります。

攻撃の種類

電力解析攻撃には、主に2つの種類があります。

それぞれの特徴と方法について詳しく見ていきましょう。

単純電力解析(SPA: Simple Power Analysis)

単純電力解析は、暗号化デバイスの電力消費の波形を直接観察し、波形のパターンから情報を抽出する手法です。

まず電力の収集として、攻撃者はデバイスの電力消費変動を高精度な機器で計測します。

その後、得られた波形を解析し、暗号化プロセスの特定部分に対応するパターンを特定するのですが、そこから波形の特定パターンから暗号キーや他の機密情報を推測します。

例えば、DES(Data Encryption Standard)やAES(Advanced Encryption Standard)などの暗号アルゴリズムでは、暗号キーの特定ビットの値によって電力消費のパターンが異なるため、SPAによりこれらのキーの一部を直接推測することができます。

差分電力解析(DPA: Differential Power Analysis)

差分電力解析は、単純電力解析よりも高度で効果的な手法です。
DPAは、複数の電力波形を統計的に分析し、ノイズを取り除くことで微小な電力消費の差異から情報を抽出します。

複数の異なる入力データを用いて、デバイスの電力消費波形を多数収集し、暗号キーの特定ビットに基づいた電力消費の仮説を立てます。
電力波形の収集をし、仮説の設定をするということです。

その後、収集した電力波形をグループ分けし、仮説に基づいて差分を計算し、差分が最も大きい部分を分析、暗号キーの特定ビットを推測します。

DPAは、データのノイズを統計的手法で取り除くため、非常に微小な電力消費の変動からでも情報を抽出できる点でSPAよりも優れています。

電力解析攻撃の対策は必要

電力解析攻撃に対する防御策は、ハードウェアおよびソフトウェアの両面から講じる必要があります。

対策内容は下記の通りです。

ハードウェア対策

電力消費のパターンを故意に乱すために、ランダムなノイズを導入し、攻撃者が波形を解析することを困難にします。
いわゆる、ノイズによって攻撃の邪魔をするというわけです。

また、電力消費の急激な変動を緩和するために、デバイスにデカップリングキャパシタを追加します。

電圧やクロック周波数を動的に変更することで、電力消費のパターンを一定にしないようにします。

ソフトウェアの対策

暗号化処理中の電力消費を一定に保つアルゴリズムを使用します。
これにより、特定の操作に基づく電力消費の変動を隠蔽するのですが、それを平坦化の技術といいます。
また、暗号処理の順序やタイミングをランダム化することで、攻撃者が予測しにくくします。
攻撃者の邪魔をすることにより、意図的に電力消費のパターンを混乱させるのが目的と言っても問題はないでしょう。

物理的対策

デバイスを電磁シールドで覆い、外部からの直接的な電力計測を困難にします。

デバイスが物理的に操作されたことを検知するメカニズムを導入し、異常が発生した場合に動作を停止させる機能を持たせます。

具体的な事例

電力解析攻撃が現実の脅威であることを示すため、いくつかの具体的な事例を紹介します。

事例1:スマートカード

スマートカードは、特に電力解析攻撃のターゲットとなりやすいデバイスです。
例えば、銀行のスマートカードは、取引を暗号化するために秘密鍵を使用しますが、攻撃者は電力解析攻撃を用いてこの秘密鍵を推測し、不正取引を行う可能性があります。

事例2:IoTデバイス

インターネットに接続されたIoTデバイスも、電力解析攻撃の標的となり得ます。
例えば、家庭内のスマートロックシステムや監視カメラは、機密情報を保持しており、これらのデバイスが攻撃されることでプライバシーが侵害されるリスクがあります。

事例3:ハードウェアセキュリティモジュール(HSM)

HSMは、高度なセキュリティを提供するために設計されたデバイスですが、電力解析攻撃に対して脆弱である場合があります。
攻撃者は、HSMが行う暗号処理の電力消費を解析することで、秘密鍵を盗み出し、システム全体のセキュリティを危険にさらす可能性があります。

まとめ

電力解析攻撃は、物理的な特性を利用して暗号化デバイスの機密情報を推測する高度な攻撃手法です。
SPAやDPAなどの手法を用いることで、攻撃者は電力消費の変動から暗号キーなどの重要な情報を盗み出すことができます。
この攻撃に対しては、ハードウェアやソフトウェア、物理的な対策を組み合わせて防御することが重要です。
現代の高度なセキュリティシステムにおいても、電力解析攻撃に対する意識と対策が求められるでしょう。