電気で声を発声する?電動式人工喉頭のお話
2024.06.23
喉を病気で摘出した場合、どのように思いを伝えれば良いでしょうか?
喉を摘出するとなると、声が出せなくなってしまいます。
声が出せない場合、どうしても筆談になってしまうイメージですが、現在では機械で発声させることが可能な製品が出ています。
今回のブログではその電動式人工咽頭について書いていきましょう。
電動式人工喉頭とは
電動式人工咽頭は簡単に説明すると、電力を利用して人間の咽頭の動きを模倣する装置です。
主に言語学習や医療訓練のために使用されることがほとんど。
この装置は、電気モーターやセンサーなどの機械部品を使用して、咽頭の運動を再現します。
主な目的は言語や発音の訓練、または嚥下障害の治療などの用途に利用されます。
電動式人工喉頭の仕組み
電動式人工咽頭の仕組みは、複雑な機械構造と制御システムで構成されています。
「センサー」「アクチュエーター」「制御システム」「ソフトウェア」
の4つで構成されているものがほとんどです。
使用ユーザーの咽頭の動きを検出するために必要なのがセンサーで、このセンサーが咽頭の位置や運動のデータを取得します。
また、アクチュエーターで咽頭の動きを制御。
電気モーターで構成されており、咽頭の特定の運動を再現するために制御されます。
その後センサーからのデータを受け取り、アクチュエーターを制御する制御システムが作動し、咽頭の動きが正確に再現。
複雑なアルゴリズムとプログラムが使用されてるものですので、センサーデータの処理やアクチュエーターの制御をソフトウェアが行い、適切な咽頭の運動が生成されます。
これらの要素によって、機械で発声することが可能になるのです。
電動式人工咽頭のメリット・デメリット
声帯を失った場合、電動式人工咽頭があればメリットしかないと思う方も多いと思いますが、メリット・デメリットも存在します。
ここでは、電動式人工咽頭のメリット・デメリットの説明を書いていきましょう。
メリット
会話ができる
筆談は相手に気持ちを伝えることのできるツールの一つですが、筆談にもスピードの限界はあります。
自分の伝えたいことを声に出すことによって、会話している相手にも自分にもストレスがかかりにくいというのが一つの大きなメリットと言えます。
医療機関の負担が下がる
嚥下障害などの医療訓練にも利用されるため、リハビリの回数や人手不足の解消に繋がります。
年齢や肺活量に関係なく大きな音量を出せる
年をとるとどうしても肺活量が下がってしまい、大きな声が出せなくなる方も少なくありません。
そのため、電動式人工咽頭を利用することによって、肺活量や年齢に関係なく相手が聞こえる音量で話すことが可能になります。
デメリット
高コスト
電動式人工咽頭は高度な技術と複雑な機械部品が必要なため、導入コストが高い場合があります。
また、需要も限られているため、生産量が少なくなりがちです。
そのため、新しく生産するとなるとどうしてもコストがかかってしまいます。
技術や使用の制限
電動式人工咽頭はまだ開発途上の技術であるため、完全に人間の咽頭の動きを模倣することが難しい場合があります。
逆を言えば進化の余地があるということでもありますが、需要が少ないためすぐにというわけにはいきません。
また、一般的な家庭での使用には適していない場合があり、専門的な環境や訓練センターでの使用が必要です。
慣れるまでが恥ずかしい
喫茶店などの大勢の人がいる中で会話をすると、周りの人が振り向いたり目立ってしまうことがあります。
やはり、現在の技術では人間の声というよりは機械的な声になってしまうので、恥ずかしいと思う方もいるかもしれません。
もっと色んな方に理解してもらうためには少し時間が必要です。
これらのメリットとデメリットを考慮して、電動式人工咽頭の利用を検討する際には、特定のニーズや目標に合わせて考察することが必要になります。
軽度の病気であれば電気咽頭療法で改善される場合もある
電気咽頭療法は、咽頭の筋肉に電気刺激を与えることで、筋肉の動きや機能を改善しようとする治療法です。
この治療法によって筋肉の強化を促し、発声や嚥下の機能が改善される場合があります。
咽頭の筋肉は、発声や嚥下などの機能に重要な役割を果たしていますが、疾患や外傷によってその機能が低下することがあるため、電気咽頭療法が有効な選択肢となります。
市町村によっては給付してくれるかも
市町村によっては障害を持っている方の生活を支援するための用具を、給付を受けて購入することができる制度があります。
給付対象者は以下の通りになります。
喉頭を摘出された方
事故や病気によって喉頭を摘出し、障害者手帳をお持ちの方は給付を受けることができます。
手続き方法や適応条件については市町村によって異なりますので、お住まいの市町村役場の福祉窓口へお問合せください。
喉頭摘出以外の理由で話すことができない方
音声機能障害や言語機能障害に関する障害者手帳をお持ちの方は、給付を受けられる場合があります。
給付を受けられる条件は市町村によって異なりますので、お住まいの市町村役場の福祉窓口へお問い合わせ下さい。
発声方法は他にもある
咽頭摘出した方で発声をしたいときは、「電動式人工咽頭」以外にも「食道発声」や「シャント発声」の練習をすれば声を出すことができます。
「食道発声」とは、口や鼻から食道内に空気を入れて、その空気を逆流させて発声させる方法です。
食道の粘膜のヒダを声門にして声帯の代わりに振動させ、音声を発声させます。
人工の器具を使わないため、自分自身の肉声です。
「シャント発声」では手術をしなきゃいけないのですが、気管孔と食道との間に細い管(シャント)を作って、食道発声と同様に食道入り口の粘膜のヒダを振動させて発声します。
このように、色々な方法で声が出なくなった方に対して発声が可能になるような事を今でも模索しているのです。
まとめ
電気を利用することによって、生活に不自由している人の気持ちに寄り添うことが可能な現代社会は、今後も電気の利用で快適になっていきます。
電気は私たち現代人にとって必要なものですが、たまには電気のない無人島に行ってみたいですよね。
無人島に行って、電気の大切さを思い出すのも大事な経験の一つだと思います。